Tel / 

aolarhythm

アオラリズム

STORY

歌はいつも人生とともに

 声というのは、一瞬にして人の心を捉える。

そのシンガーがどれほどの想いで伝えようとしているか、その届き方は、上手い下手を越えた想いの波動にある。

不器用でも不慣れでも自分の魂に忠実に、身体の奥底から懸命に伝えたいとするその姿が、人の心を動かすことは確かにあるのだ。

aolarhythmというまったく無名のアーティストが一枚のアルバムをつくり出すまでには、その人の情熱をもってしか語れないストーリーがあった。

 aolarhythmこと星本明徳は現在47歳、いわゆるアラフィフと呼ばれる年齢だ。

9年前に沖縄に移住し、妻と子供2人とともに暮らしながら、那覇市内で鉄板焼き屋の店主として、日々鉄板の前に立ち、こだわりの石垣牛や車海老を焼いている。

県内外からの客も多く、評判の店だ。無論、まさか星本が音楽をやっているなど誰も思っていなかった。

 しかし店をオープンして6年、スタッフも育ち、店を任せられるようになった時、ふと、星本の中に昔の自分が頭を過った。

ハードロックに夢中になり、21歳で名古屋から上京し、ライブハウスで声を張り上げていた頃のことだ。

当然プロになれると思っていたが、しかし現実はそう甘くはなく、星本は30を過ぎた頃、挫折。

それ以来、当時の音楽仲間とは連絡をとらず、飲食店で働いてきた。たまに、趣味程度に、一人、アコースティックギターで曲をつくっていたが、50歳という年齢を前にして、いま形にしなかったら、もう一生音楽に関わることはないかもしれないと、再び音楽への想いが沸き上がったのが2017年夏。

 星本がまず連絡したのは、当時の仲間であり、いまもプロとして活躍している元MARCHOSIAS VAMPのギタリスト鈴木穣と、星本とは同じバンドIndian Coltで活動していたパーカッショニストの松本健だった。

 しかし、15年も離れていた音楽活動で、自分に何ができるのか。少し腰が引けていた部分もあったのだろう、鈴木に「どうしたいの?」と問われ、最初、星本は「酒でも飲みながら気持ちよく聴けるアコースティックなアルバムができたら」と話したそうだ。

 しかし、実際にリハーサルに入ると、鈴木は、星本の楽曲を、想像を遥かに越えるテンションの高いロックサウンドに仕上げてきていた。

「せっかくやるならカッコいいものにしたいじゃん」、鈴木のその言葉に、星本はあらためて、音楽を本気でやっていた頃の自分を思い出したと話す。

 そこからは早かった。鈴木と一緒にプレイしているベーシスト・遠藤たいじろうが加わり、鍵盤が必要となれば、X JAPAN等のサポートをしているキーボーディストの田辺裕己彦が加わり、還暦にしてバンドを3つ持ち、数多くの若手アーティストのサポートでも全国ツアーをまわるドラマーの富岡”Grico"義広が加わった。

あれよあれよと最強のメンバーが集まった。

だから、このメンバーが織り成すグルーヴをそのままパッケージすることを大切にレコーディングした。そしてレコーディングのたび、メンバーの音楽を心から愛し、楽しむ姿と、メジャーもアマチュアの垣根もなく、完成に向けてただひたすら高いクオリティを求め続ける情熱に触れ、星本も奮い立たされた。

 星本は、いま自分ができる精一杯を歌に込めることだけに専念した。もうブランクなど怖くなく、音楽ができる喜び、歌う喜びとはこれほどに素晴らしいのかと、その時間を心底楽しんだという。

 音楽は、諦めた若い頃の夢だった。しかし、本当は決して夢なんかではなく、若さも関係なく、いつだって日々の中で鳴り響いているのだということを、いま、星本は知っている。

 鉄板の前で肉を焼く時も、家族と団らんの時も、沖縄で暮らしを続け、喜びも哀しみも味わいながら、生きている限り、音を鳴らし、歌い続けよう。

「魂のざわめき いまだ鳴りやまず」

そう歌うタイトル曲「SING」は、星本にとって、人生を音楽とともに生きることを誓う、高らかな宣言であると思える。

 

ライター 川口美保